こどもたちへ 積善と陰徳のすすめ
1/19

1  よき人生への誘いざない        ―『和語陰録』に寄せて                          九州大学教授 柴 田  篤今から四〇〇年ほど前、中国のある人が自分の人生を振り返りながら、一人息子に語りかける書物を作りました。伝えたかったことは難しいことではありません。人は善いことを行うことによって、自分ばかりでなく他人をも幸せにすることができる。それも、人の目に触れるようにするのではなく、人知れず行うのだ、と。多くの実例を引いてかみくだくように書かれたこの書物が発するメッセージは、沢山の人々の心に響きました。江戸時代には我が国に伝わり、分かりやすい日本語に翻訳して出版されました。それが、『和わ語ご陰いん録ろく』という本です。それでは、人はいつでも善いことを行うものでしょうか。中国の古典の一つである『易えき経きょう』の中に、次のような言葉があります。「顔回は自分に善くない点があれば、それに気がつかないことはなかっしつ

元のページ  ../index.html#1

このブックを見る